回答を記させていただきます。
【質問1・3について】
①まず、「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下「動物愛護管理法」といいます)は、「動物の所有者
又は占有者は、(中略)動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、(中略)又は人に迷惑を
及ぼすことのないように努めなければならない。」としています(同法第7条第1項)。
②そして、所有者又は占有者が守るべき具体的な基準は、環境大臣が決めればよいとしています
(同法第7条第7項)。
③これを受けて、環境大臣は、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」というものを制定していますが、
犬については、「犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には、(中略)犬を制御できる者
が原則として引き運動により行うこと。」などと定めています(同基準第4の5)。
もっとも、「原則として」と記されているため、引き運動によらない運動(ノーリードでの散歩)が「例外」
として許される余地がありますが、どのような場合に許されるのかは明らかでありません。
④そこで、各地方自治体が、条例という形で、さらに具体的な基準を定めていることが通常です。
例えば、東京都の場合は、「東京都動物の愛護及び管理に関する条例」というものがあります。
そこでは、「犬を制御できる者が、犬を綱、鎖等で確実に保持して、移動させ、又は運動させ」ることが
義務付けられており(同条例第9条第1号)、この義務に違反した場合は、「拘留又は科料」という
刑事処罰の対象になるとされています(同条例第40条第1号)。
たしかに、同条例の第9条第1号ニを見ますと、「逸走又は人の生命、身体及び財産に対する侵害の
おそれのない場合」には例外的にノーリードでの散歩が許されるかのようにも読めますが、どのようなペット
でも絶対安全ということは考えにくいことから、この例外規定に該当するケースというのはほとんど想定し
難いのではないかと思われます。
愛犬家の皆様の中には、この例外規定をもってして、ノーリードでの散歩は禁止されていないと主張される
方もいらっしゃるようですが、現在の条例の解釈論としては難しいと言わざるを得ません。
【質問2について】
まず、上記のとおり、そもそもノーリードでの散歩は、原則として、条例違反と解されますので、条例違反を
根拠として注意をする権利があると考えられます。
また、そもそも、人間の生命や身体は最も尊重されるべきものですので(憲法第13条参照)、法律上
や条例上の具体的な定めがなくとも、生命や身体に危険が生じそうな場合は、危ない行為をやめるように
という差止請求権が認められると思われます。
【質問4について】
抑止力が弱い順から記しますと、まずは、直接注意をするという選択肢があります。
もっとも、キレやすい人がいる昨今、恨みを買うことが怖いようであれば、行政機関に通報するとよいでしょう。
上記のとおり、ノーリードでの散歩は、原則として、刑事処罰の対象ですので、刑事事件を担当する行政
機関である警察に通報できます。
また、警察ほどは抑止力がないかもしれませんが、あまり事を荒立てたくない場合は、まず市区町村に
通報するという選択肢もあるでしょう。
【その他】
余談ですが、上記の東京都の条例によりますと、もし、ご自身のペットが人を噛んだような場合には、
①24時間以内に、事故の内容と措置の内容を、知事(実際に届け出る先は保健所ですが)に届け出る
②48時間以内に、ペットを獣医師に検診させること、
が義務付けられています(同条例第29条)。
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